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東京高等裁判所 平成4年(行コ)76号 判決 1992年12月14日

埼玉県浦和市常盤一〇丁目五番一九号

控訴人

岡部照夫

右訴訟代理人弁護士

尾崎正吾

埼玉県浦和市常盤四丁目一一番一九号

被控訴人

浦和税務署長 菊地幸久

右指定代理人

小磯武男

神谷宏行

金子秀夫

水野浩

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴人の当審で追加的に併合された請求を棄却する。

三  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  控訴の趣旨(原判決に対する不服)

(一) 原判決を取り消す。

(二) 被控訴人が控訴人に対し昭和六二年三月一二日付けでした昭和五八年分所得税に係る更正処分のうち、納付すべき税額一二九七万五三〇〇円を超える部分を取り消す。

(三) 被控訴人が控訴人に対し昭和六二年一〇月三一日付けでした昭和五九年分から同六一年分までの所得税に係る更正処分のうち、昭和五九年分の納付すべき税額二三二三万三八〇〇円、昭和六〇年分の納付すべき税額一二三五万六三〇〇円、昭和六一年分の納付すべき税額一五九六万五八〇〇円をそれぞれ超える部分を取り消す。

2  当審において追加的に併合された請求

(一) 被控訴人が控訴人に対し昭和六二年三月一二日付けでした昭和五八年分所得税に係る過少申告加算税賦課決定処分のうち、税額四万一〇〇〇円を超える部分を取り消す。

(二) 被控訴人が控訴人に対し昭和六二年一〇月三一日付けでした昭和五九年分から同六一年分までの所得税に係る過少申告加算税賦課決定処分のうち、昭和五九年分の税額一万四〇〇〇円を超える部分、昭和六〇年分の税額一万三〇〇〇円を超える部分、昭和六一年分の税額九三万三五〇〇円の賦課決定処分をそれぞれ取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一、二項同旨

第二当事者の主張

次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の事実摘示記載のとおりである。

1  原判決三枚目表五行目に「関東信越」とあるのを削除する。

2  同三枚目裏四行目に「本件各課税処分」とあるのを「本件各更正処分」と改める。

3  同三枚目裏九行目に「一五九六万五〇〇〇円」とあるのを「一五九六万五八〇〇円」と改める。

4  同三枚目裏一〇行目の次に、行を変えて、次のとおり加える。

「 また、控訴人の提出した期限内申告書には本判決の別表記載のとおりの申告暮れがあるが、これに基づいて控訴人が納付すべき税額は同表の「差引納付税額」欄に記載のとおりであり、右税額によって計算すると、過少申告加算税の、金額は同表の「過少申告加算税の認容額」欄に記載の金額となる。よって、控訴人は被控訴人に対し、本件各過少申告加算税賦課決定処分のうち、右認容額をそれぞれ超える部分(昭和六一年分については賦課決定処分の全部)の取消しを求める。」

5  同四枚目裏五行目表五行目及び八枚目裏三行目に「確定申告に計上された」とあるのをいずれも「確定申告計上漏れの」と改める。

6  同五枚目裏一行目の次に、行を変えて、「確定申告に計上されたものである。」を加える。

7  同五枚目裏二行目に「雑所得金額」とあるのを「確定申告計上漏れの雑所得金額」と改める。

8  同六枚目裏八行目に「八〇万六五〇〇円」とあるのを「一八〇万六五〇〇円」と改める。

9  同一〇枚目表一〇行目に「千葉製材所」とあるのを「千葉製材」と改める。

10  同一二枚目表一一行目に「その営業全部」とあるのを「工場建物等の賃借権」と改める。

11  同一三枚目裏六行目の次に、行を変えて、次のとおり加える。

「 なお、この場合において、仮に、控訴人の不動産所得の金額の計算上右立退補償金を必要経費に算入するとしても、その時期は、その支払債務が確定したとき、すなわち、控訴人が訴外会社に右立退補償金を支払うことを約した昭和五七年三月一日ということになる。そうすると、右立退補償金は、昭和五七年分の不動産所得の計算上必要経費に算入されるべきものであって、本件係争各年分の不動産所得の必要経費に算入することはできない。」

12  同一五枚目裏九行目に「一三二〇万円」とあるを「一四四〇万円」と改める。

13  同一八枚目裏一一行目に「同第一一八条第三項」とあるのを「同法第一一八条第三項」と改める。

14  同一九枚目表七行目の「金額」の次に「並びに駐車場の貸付に係る賃料収入及び昭和五八年分についての雑所得金額一〇〇万円を計上すべきところ、これが確定申告に漏れていたこと」を加える。

15  同一九枚目裏一行目及び九行目に「租父」とあるのをいずれも「祖父」と改める。

16  同一九枚目裏五行目に「占有権」とあるのを「占用権」と改める。

17  同二〇枚目裏八行目に「未梢的」とあるのを「末梢的」と改める。

18  同二二枚目裏一一行目に「訴外」の次に「会社」を加える。

第三証拠

証拠の関係は、原審及び当審記録中の証拠目録記載のとおりである。

理由

一  請求原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

また、抗弁1の事実のうち、被控訴人が控訴人の確定申告に計上されたものと主張する金額が申告どおり計上されるべきものであること並びに駐車場の貸付けに係る賃料収入及び昭和五八年分についての雑所得金額一〇〇万円を計上すべきところ、これが確定申告に計上漏れであったことは当事者間に争いがなく、被控訴人が必要経費として計上した舗装路面及び店舗の減価償却費、舗装路面の一部除去損失並びに変電設備用建物の除却損失についても控訴人はこれを争うものではないと解される。

二  そこで、本件土地のうち約一五〇〇平方メートルの貸付に係る賃料収入及び本件店舗の貸付に係る賃料収入のうち、確定申告に計上されていない金額を、控訴人の本件係争各年分の所得金額の計上上、控訴人の収入とすることができるかどうかを検討することにする。

原審における控訴人本人尋問の結果によって成立が認められる甲第一、第二号証、第三号証の一、二、第四ないし第六号証、弁論の全趣旨によって成立が認められる甲第七号証の一ないし三、第八号証の一、二、第九号証、成立に争いのない甲第一〇号証、乙第二ないし第四号証、第一三号証の一、二、第一四ないし第一六号証、原本の存在と成立に争いのない乙第六号証の一、二、第二〇号証、原審における控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

1  控訴人の祖父は、大正時代から木材業を営んでいたが、控訴人の父親の時代の昭和二三年に旧会社が成立された。

旧会社は、控訴人の父親所有の本件土地上の工場建物及びその付属施設を賃借して、製材業及び木材業を営んでいた。

控訴人は、昭和三八年に本件土地及び右工場建物等の所有権を相続によって取得し、旧会社の代表者にも就任し、右工場建物等を引き続き旧会社に賃貸していた。

2  本件土地の付近一帯は「木場」と称される場所であるが、東京都の都市計画の一環として、木場が「新木場」に移転することになり、東京都と旧会社は、昭和五六年二月一七日、「河川占用の返還に係る補償契約書」に調印した。

右契約書によれば、旧会社は河川占用場所を返還すること、旧会社は河川占用場所を返還した後は河川を利用する製材等の事業は一切行わないものとすること、河川占用の返還等に係る補償金は七三七二万六七〇三円とすること、旧会社は、その所有する物件を昭和五六年三月三一日までに撤去すること等が定められている。

3  控訴人は、右の河川占有場所の返還とこれに伴う補償金の受領を契機に、古くからの株主、役員及び従業員を整理することを目的として、旧会社を解散することとし、旧会社は、補償金受領後の昭和五六年三月三一日に株主総会の決議により解散し、同年六月三〇日には清算結了の登記がされた。

4  同年四月一五日、新たに製材業、木材及び建材等の販売等を目的とする訴外会社が設立され、控訴人が代表者に就任した。また、訴外会社が設立中の同年四月一日付けで、旧会社と訴外会社との間の営業譲渡契約書が作成されており、旧会社は昭和五六年四月一日現在をもってその営業の全部を訴外会社に譲渡する旨が定められている。

さらに、昭和五六年四月一日付けで、控訴人と訴外会社との間の前記工場建物等の賃貸借契約書が作成されている。この契約書には、賃貸借の期間は昭和五六年四月一日から昭和七六年三月末日までの二〇年間とすること、資料は一か月三〇万円とすること等の定めがあるほか、「本契約は旧会社から権利を承継したので訴外会社が契約するものである」との記載がある。この契約書は、昭和五六年四月一日ではなく、後日作成されたものであり、貼付されている収入印紙は同年五月一日以降に使用されているものである。なお、権利金・敷金の授受はされていない。

そして、訴外会社は、設立中の昭和五六年一月頃にフォクリフトを一七九万円で購入し、設立後の同年五月には一五二万四二〇〇円の費用でホイスト走行用鉄骨工事をしている(控訴人は、訴外会社が、本件土地及び地上の工場建物等で、陸送の方法で製材業を営んでゆく積もりであったので、これらの機械の購入をしたと供述している。)。

5  訴外会社は、昭和五六年一一月三〇日、倒産した木材会社から、新木場所在の土地及び地上の倉庫・作業所を代金一億〇五〇〇万円で買い受けた。そして、訴外会社は、昭和五七年から、新木場の右土地を本拠として製材業を営んでいる。

また、控訴人と訴外会社との間で昭和五七年三月一日付けの覚書が作成されているが、その内容は、次のとおりである。

(一)  控訴人と訴外会社は、本件土地上の前記工場建物等の賃貸借契約の期間が昭和七六年三月末日まで残存していることを確認し、本日これを合意解約のうえ明け渡すことを条件に、控訴人は訴外会社に対し二億五二〇〇万円を賃貸借消滅に伴う対価として補償する。

(二)  右補償金の決済方法は、本日から一五年以内の割賦返済として、地上の工場建物等を取り壊した本件土地又は本件土地及び建て替えた家屋を訴外会社の名義によって訴外会社が管理運営し、その収益金を上限として、毎月右補償金に振替充当するものとする。

ただし、固定資産税等の相当額は、収益金から控訴人に配分することとし、その金額は、両者間において別途協議するものとする。よって、訴外会社が取得できる金額は毎月の収益金から控訴人に配分した残額とする。

(三)  前記補償金は、一括決済されるべきであるが、控訴人の資金事情を考慮し、訴外会社は分割返済を認めるものである。したがって、割賦返済に伴う遅延損害金については、右補償金が決済された後において、後日両者協議のうえ決定するものとする。

(四)  訴外会社の管理運営期間の中途において、前記補償金の満額に達したときは、速やかに管理運営権を控訴人に返還し、精算するものとする。

なお、控訴人側には、訴外会社との間の賃貸借契約を合意解約しなければならない理由はなかった。

6  控訴人は、その後、本件土地上の工場建物等を取り壊し、土地を整備した。そして、訴外会社は、昭和五七年五月一日から昭和五九年二月二九日まで、本件土地のうち約一五〇〇平方メートルを菊川小学校運動場用地として賃料月額一二〇万円で墨田区に賃貸し、右賃料の支払を受けた。その間、訴外会社は控訴人に対し、固定資産税相当額として月額二五万円を支払った。

右賃貸借契約においては、墨田区が土地の維持管理を行い、事故防止等万全の措置を講じるものとし、事故が発生した場合は墨田区の責任において処理するものとするが、訴外会社の整地した敷地の陥没等により発生した事故については訴外会社の責任により処理するものとする旨定められている。

7  また、控訴人と訴外会社は、昭和五九年五月一〇日付けで「建物及び駐車場賃貸借契約書」を作成した。その内容は次のとおりである。

(一)  控訴人と訴外会社は、控訴人が控訴人所有の本件土地上に建物(本件店舗)を建設してこれを付属の駐車場とともに訴外会社に賃貸し、訴外会社が改めてこれを株式会社ジョナスに賃貸するため、控訴人・訴外会社間の契約を締結する。

(二)  控訴人は、訴外会社及び株式会社ジョナスの指定する仕様及び業者により本件店舗を建設する。

(三)  訴外会社は控訴人に対し、本件店舗の建築費として七〇〇〇万円を無利子で貸し付けることとし、これは訴外会社が株式会社ジョナスから受け取る同額の保証金をもって充てる。

この貸付金の返済方法は、訴外会社の株式会社ジョナスに対する右保証金の返還方法(一四四回の分割払)に準ずるものとする。

(四)  訴外会社は控訴人に対し、敷金として二〇〇万円を預託する。

(五)  賃料は月額五〇万円とする。これは訴外会社と株式会社ジョナス間の賃料の改定に応じて増額することができる。

(六)  建物建築の履行期、賃貸借契約の期間及びその他の事項については別途に定める訴外会社と株式会社ジョナスとの契約書に準ずるものとする。

そして、訴外会社と株式会社ジョナスは、昭和五九年五月一〇日、本件店舗についての賃貸借予約契約を締結し、本件店舗の建設費のうち、七〇〇〇万円は訴外会社が負担し、これを超える二七二一万六〇〇〇円は株式会社ジョナスが負担すること、株式会社ジョナスは、訴外会社の右建設計画に協力するため、保証として七〇〇〇万円を訴外会社に預託することとし、右保証金は無利子とし、三年間据え置いた後、一二年間に均等月賦で賃料と相殺して支払うこと、賃貸借期間は一五年間とすること、賃料は月額二八〇万円とすること、本件店舗の公租・公課は訴外会社の負担とし、電気・ガス・水道の料金、町会費、衛生費、その他使用上の諸費用、会費等は株式会社ジョナスの負担とすること等が定められた。

その後控訴人は本件店舗を建築し、昭和五九年一〇月一七日に右予約契約は本契約に切り替えられ、賃貸借開始の日は同月一二日とされた。

訴外会社は、株式会社ジョナスから、月額二八〇万円の賃料を受領し、控訴人に対しては、固定資産税相当額の賃料として月額四五万円の支払をしている。

8  訴外会社は、株主である控訴人及びその親族三人が発行済株式一万株のうち七〇パーセントを有しており、法人税法第二条第一〇号に規定する同族会社である。

訴外会社の昭和五八年(昭和五七年四月一日から昭和五八年三月三一日までをいう。以下同じ。)から昭和六二年までの各事業年度における繰越欠損金控除前の申告所得金額、訴外会社が本件土地及び本件店舗を賃貸したことによって得た賃料収入と控訴人に対して支払った賃料との差額金に相当する収益並びに右収益がなかったとした場合の訴外会社の所得金額は被控訴人主張のとおりであり、いずれの事業年度においても欠損金等を控除した後は所得金額が零か又は欠損金額が生じており、納付すべき法人税額は零とされている。

以上の事実が認められる。

そして、以上認定の事実によれば、訴外会社が本件土地上の工場建物等の賃借権を旧会社から承継し、その後控訴人との間でその賃貸借契約を合意解約したことが事実であったとしても、控訴人が訴外会社に対して補償金二億五二〇〇万円の支払を約し、その支払いについて前記覚書記載のような合意をしたことは、経済人の行為として著しく不自然、不合理であって、所得税法第一五七条第一項の規定により被控訴人においてこれを否認することができるものと解するのが相当である。

その理由は次のとおりである。

1 工場建物等の賃貸借契約の合意解約は、訴外会社が新木場に土地・建物を購入することができ、同所において製材業を営むことになったことが専らその理由であって、控訴人には合意解約をしなければならない必要性は全くなかったものである。したがって、右合意解約は賃借人である訴外会社の一方的な事情によるものであって、このような場合に賃貸人である控訴人が賃借権消滅の対価である補償金を支払うというのは、通常はないことであって、経済的取引としては極めて不自然であると考えられる。

もっとも、右合意解約によって、控訴人は本件土地及び地上の建物を利用することが可能となり、控訴人が結果的には大きな利益を受けることになったとみうる余地もあるが、そうであるからといって右補償金の支払に合理性があるということはできない。また、訴外会社が賃借していたのは建物であって、右建物は製材業のための工場として使用されていたものであり、河川占用場所は既に東京都に返還されているのであるから、本件土地についてはともかく、建物の利用価値はそれほど大きいものであったとは考えられない。

2 訴外会社は昭和五六年四月一五日に設立された会社であって、本件土地上の建物において木材業の営業を開始していたとしても、合意解約までの期間は一年間に満たないものであって、極めて短期間である。したがって、新木場に移転することによる訴外会社の損失も決して大きいものではなかったはずである。

前記認定の事実によれば、訴外会社は昭和五六年五月までに約三三〇万円の費用を投じているが、この金額は前記賃料等と対比して多額であるとはいえない。

そうすると、訴外会社が新木場に移転することによる損失は、多額の補償金の支払を必要とするものではなかったと推認することができる。

3 控訴人個人では本件土地及び本件店舗の管理運営をするのは困難であって、これを訴外会社に委ねざるをえないという事情があったものと認めることもできない。

そもそも、本件土地及び本件店舗の維持管理は、原則として賃借人の責任において行うものとされており、賃貸人においてしなければならない管理行為は特段存在しなかったものである。

また、何らかの管理行為を要するとしても、控訴人がこれを行うことが不可能であるとは到底考えられない。成立に争いのない乙第九ないし第一二号証によれば、控訴人は、昭和六二年から平成二年当時、東京都内(ほとんど墨田区及び江東区である。)に多数の貸地及び貸家を所有して賃料収入を得ており、その中には岡部保全合名会社及び株式会社東急コミュニティーに管理を委託し、管理費を支払っている物件もあることが認められる。したがって、控訴人自らあるいは第三者に委託して管理をすることが不可能であるとはいい難い。

さらに、訴外会社に管理を委託するとしても、訴外会社が株式会社ジョナス等から受領している賃料額は正当な管理費をはるかに上回ることは明らかであり、また、管理を委託するためには、そのための権限を与えれば足りるのであって、当該土地等を第三者に転貸する権能まで付与する必要はないから、訴外会社に本件土地等の管理を委託しているということによって、訴外会社の右賃料の取得を合理化することはできない。

4 以上のとおり、前記補償金の支払に関する合意等は、経済的取引としては異常なものであるといわざるをえず、独立、対等で何ら特殊な関係にない当事者の間では通常行われない取引であり、このような行為は、訴外会社が控訴人らの同族会社であるからこそ可能であったものということができる。

そして、前記認定の訴外会社の繰越欠損金控除前の所得金額等に照らして、本件土地及び本件店舗の賃料は訴外会社の収入であるとする訴外会社の行為・計算を容認するときは、その株主である控訴人の所得税の負担を不当に減少させる結果となるものと認められる。

以上のとおりであるから、被控訴人が本件各更正処分をするに当たり、所得税法一五七条第一項の規定を適用して、右行為・計算にかかわらず、控訴人の本件係争各年分の所得金額の計算上、右賃料収入が控訴人に帰属するとしたのは相当である。

したがって、本件各更正処分は違法とはいえない。

三  本件過少申告加算税賦課決定処分も、本件各更正処分に基づき納付すべきものとされた税額を基礎として被控訴人主張の国税通則法の規定を適用してされたものであるから、適法である。

四  以上のとおり、本件各更正処分の取消しを求める控訴人の請求を棄却した原判決は相当であるから、民訴法第三八四条により本件控訴を棄却し、当審において追加的に併合された本件各過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める請求も理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民訴法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 篠田省二 裁判官 矢崎秀一 裁判官 及川憲夫)

別表

<省略>

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